僕は基本的に、人生は積み重ねていくものだと思っている。
知識、技術、失敗、成功など、培った経験がたくさんあればある程生き甲斐のある人生になると思うし、また作り手としてもより良い作品が作れるようになると考えている。
少なくとも、今のところは。
しかし一方で、尊敬する芸術家の岡本太郎氏の言葉がずっと気にかかっている。
「人生は歳を重ねる毎にどんどん捨てていくほうがいい。捨てることによって身軽になり、自由に解放されてゆく」
一部正確ではないかもしれないが、そういう事を仰っている。
確かに、そうかもしれない。
何かを背負えば背負う程身動きがとりにくくなり、自分の活動範囲が制限される。社会的地位を得ることで責任を負い、それまで許されていた失敗が許されなくなる。また知っていることで出来る事がある一方、知らないからこそ出来るという事もある。(岡本太郎氏の言葉の真意はそういうことではないかもしれないが)
捨てて自由になる、というのはある種魅力的にさえ聞こえる。
でもそれは積み重ねたせいではなく、積み重ねたものを自ら壁にしてしまっているからなのではないかと思う。
歳を重ねると気力や体力が減り無意識に自分ができない事を避けるようになり、発想力が落ち、若い頃のように生き生きとして自由なアイデアが湧いて出てこなくなる。
行動する前にそれまで得た経験から悪い方向に考えすぎてしまって、手や足が止まってしまい、結果今まで作ってきたものと同じようなものしか作れなくなるのだ。
であればむしろ、それを打開する為に知識や勉強が必要だ。
人は長年生きる中で自分の視野に入らないものはなんだかよくわからないものになり、よくわからないからそのまま手をつけずに置いておこう、と考えてしまう。
そうして自分の知る安全地帯だけで生活しようとする。
でもそこを一歩踏み込んで、新しい知識や経験を得ることで、脳に刺激が入り、若々しい、新しいアイデアが生まれてくる。
もし捨てるものがあるとすれば、それは固定観念だ。
これだけは、積み重ねてはいけない。
これは無意識に持ち歩いてしまうものなので、気をつけておかねばならないと思う。
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